最後は「自然に引き上がる」つまり”反重力としての引き上げ”です。
ここまでの2回、筋肉を意識的に使うこと、つまり力を入れるやり方では、引き上げにはなりません!というスタンスで書いてきました。その理由が今回の反重力としての引き上げなんです。力が入っていると、この力が働かないんです。さっそく見ていきましょう。
上へ、上へと重力に逆らって・・・いくこと」この記述よく見かけますがそのイメージは3種類見受けられます。
①「頭のてっぺんから糸で吊られる」
②「身体を上から吊り下げる」
③「身体を(が)地面から押し上げ(られ)る」
くどいようですが意識的な筋肉は使っていない前提でお話します。この先はかなり自分なりのイメージが先行してしまいますので悪しからず、差し引いてお読みください。
①②③では、それぞれ意識する場所が違っています。
①は背骨 ②は皮膚(の脱力) ③は拇指球 です。
①の頭のてっぺん・・・この場所も見解が分かれますね。頭頂部?つむじ?
つむじです。つむじだと背骨が引き抜かれる感じになり8の字の引き上げ(後述)
の力が働いてきます。頭頂部だと・・・
②のイメージになります。頭頂部を止めて体を吊り下げる。
ここでは意識する場所を”皮膚(の脱力)”と書きましたが、上手くいけば”皮膚呼吸が始まって特に上半身が風船のように拡がる”イメージです。 上手くいかなければ、つまり
どこかに力が入っていたら(特に腹筋)、首肩に力が入って縮む感じになります。
テルテル坊主みたいに首周りが締まって下半身が拡がってる感じでしょうか?
そういう意味では②は危険かもしれません。まさに、もろ刃の剣・・・
一歩間違うと体を壊す方向に向かってしまいます。
結論としては①でも②でもご自分に合う方でいいと思います。
自分に合う方って?何を基準に?と悩んで頂けるとお話しやすいのですが。。
私が基準として考えるのは”体重が足の拇指球に絞り込まれる方”です。
なぜなら、それによって③体が地面から押し上げられるからです。それはのちほど。
ですから・・
①または② で ③になる という関係。。
①②についてもう一つ。①でも②でも必ず起こる現象があります。
それは背骨と骨盤のつなぎ目のエリアに力が入ることです。
それによって腰から胸に向かう8の字の引き上げの力が流れます(これものちほど)。
関節や椎間がギュッと詰まっているとこの力が流れません。
当然、筋肉を意識的に使っているとこの感覚はありえません。筋肉を意識的に使う・・・1番ポジションでお腹をキュッと締めたり、膝曲げて180度に開いた足をお尻の筋肉でキュッと締めて膝くっつけたり・・・です。
しつこくてスミマセン。でも引き上げが入らない原因はこれですから。。。
ここで簡単に③について触れてみます。
体を押し上げてくる力の源って、なんでしょう?
体重です。体重が地面にかかることでこの反重力な力が働きます。
反重力な力の初動・・・それが拇指球体重です。
なので①②において体重が拇指球に絞り込まれることを基準としたのはこのためです。
そこの確認。まず、足裏全体で地面に体重をかけます。
①または②で自然に拇指球に体重が集まってくる感じ(最初は小指~踵の側から集まってくる感じが強いはず)になります。でも足裏全体は地面に触れてる状態です。
つまり、拇指球だけで立つわけではないんです。拇指球だけで立つと親指やアキレス腱に余計な力が入ってますからね。それでは引き上げの力は上に流れて行きません、
脱力していないと自然な引き上がりはないんです、念のため。では本題。
拇指球に体重が集まってくると
→ 内転筋群に力が入ります。体が中心によってくると感じる方もいます。すると
→ 背骨と骨盤のつなぎ目のエリアに力が入って拇指球と一直線につながった感じにな
ります。この背骨と骨盤のつなぎ目のエリアに力が入る!これ先程出てきました。
①②で必ず起こる現象でした。
ですから腰から胸に向かう8の字の引き上げの力が③によっても流れます。つまり、
さらに腰から胸が押し上げられます
→ さらに拇指球に体重が集まってきます
→ さらに③内転筋群に・・・ というサイクル運動に入ります。
この8の字のサイクル運動が、そのまま引き上げになります。
そしてこのサイクル運動が続くと・・・重心がある一点に集まってきます。
そうなると体重移動がやりやすいんです(?_?)。重心も後で簡単に説明いたします。
コントラクションが出来ない!なんていうのは、この重心の位置に原因がある場合がほとんどです。分かるような分からないような・・なので、
ここまでをアッ!という間にまとめると
「脱力した状態から、重心移動で母指球に体重を絞り込めば自然に引き上がる」です。
ここで難しいのは「脱力」と「重心の知覚」です。
仮にこの2点だけをテーマにすると”呼吸”が答えになって、それを邪魔するのが固めた腹筋で・・・といった展開になっていくんでしょうけど。
さて前回、後回しにしたの肩甲骨の下げ方についての①”首と腹筋を引き上げて-肩甲骨を下げる”についてです。併せて8の字と重心も簡単に説明します。
首を引き上げては、今回の①②と同じなのですが、悩ましかったのは”腹筋を引き上げて”という部分。。今回、書いてきたような腰からの力が胸を押し上げる8の字の力が働けば胸が上がると同時に腹筋は引き伸ばされるように引き上がります。
と同時に恥骨が引っ込んで下腹が重く重心を持つ、充実したような感じになります。
これを”下腹重心の引き上げ”と呼ぶこととします。
もう一つ、腹筋を引き上げる方法があります。
それが、下腹を引っ込ませて背骨と骨盤のつなぎ目に向かって斜め上(斜め後ろ)に引き込む(吸い付ける)ように腹筋に力を入れるやり方。下腹をへこませて背骨と腰のつなぎ目に力が飛べば、腰からの力が胸を押し上げるように働きます。
その時の腹筋は上腹部から下腹部まで一様に力が入って、上半身と下半身を繋いでいるような状態になります。
この下腹を引っ込ませる引き上げを”下腹腹筋の引き上げ”と仮に呼びます。
こちらは腹筋が上から下まで、さらに腰までガッチリ固まるので速いピルエット等は回りやすいと思いますが、伸びやかさは完全にスポイルされてしまう感じです。
ではピルエットの時だけ下腹を引き込む、というように使い分ければいいのでしょうか?
共存できないんです。理由は、重心の位置が違うからです。
”下腹重心の引き上げ”での重心は下腹、”下腹腹筋の引き上げ”での重心は鳩尾です。
重心を瞬時に切り替えるというのは無理かと思います。
具体的に”下腹重心の引き上げ”と”下腹腹筋の引き上げ”とをそれぞれ見てみましょう。
まずは”下腹重心の引き上げ”
Ⅰつむじで背骨を引くようにすると背骨と骨盤のつなぎ目のエリアに力が入ります、と同
時に胸が少し張ります
Ⅱ胸が張るような斜め上の力とバランスして腰から下腹に落ちるような斜め下の力が働き
ます
Ⅲその二つの力で体の前面が引き伸ばされ鳩尾が上下に引き出されるようになり鳩尾の力
が抜けます、と同時に下腹に重さが増えていきます
Ⅳ最後に背中がギュッと締まると引き上げのサイクル運動に入ります。上半身の力が全部
下腹に移動してくるような感じでしょうか?
続いて”下腹腹筋の引き上げ”
ⅰ下腹を引っ込ませて背骨と骨盤のつなぎ目に力を送ると肋骨を押し上げる力が働きます
ⅱ肩甲骨の下あたりが締まって肋骨を引き上げるサイクル運動に入ります
ⅲ鳩尾に力がたまって上半身は逆三角形に引き上がります
ⅳ鳩尾と背骨と骨盤のつなぎ目とが繋がって腰からの大きな逆三角形の引き上げが形成さ
れます。
先ほど”下腹腹筋の引き上げ”では伸びやかさが無くなってしまうと書きました。
それは”下腹腹筋の引き上げ”では、高い位置にある鳩尾の重心を支えるために腰は固まってしまいます→同時に腰は動けなくなります→腰が固まれば足首も固まります→膝も捻りやすくなり膝痛の原因になります。膝は捻ってはいけない所ですから。。。
要するに下半身の柔軟性が無くなって、下半身のトラブルを引き起こしてしまうんです。
ところで、この逆三角形になる”下腹腹筋の引き上げ”を使うスポーツがあります。
ボディビルです。ボディビルの大会って逆三角形でポージングとりますね、そして退場される時って、みんな歩幅が狭い。闊歩してる人、いませんよ。腰を固めて柔軟性が無いからです。ああいう特化したスポーツではいいんですが、ダンスでは逆三角形の引き上げは使えないんです。それでも筋力で大きく動こうものなら足のトラブルが必ず訪れます。
ついでに、それぞれの呼吸を見てみましょう?
”下腹重心の引き上げ”での呼吸は、
下腹に落ちて低重心に働きます。これは体の前面が上下に引き伸ばされるように働くの
で縦の呼吸となります。
対して、”下腹腹筋の引き上げ”での呼吸は、
お腹ではなく背中に入ります。そうすると上半身の椎間・肋間・関節が開かれるように
左右に働くので横の呼吸となります。実はどちらの呼吸も欲しいんです。
つまり”縦の呼吸をベースに横の呼吸を入れる”。。。
それには「よくよく鍛錬すべきである」。。。どこかの本によく出てくるこのセリフが似合いますね、コレ!