11月は転びやすい!
簡単に言うと膝が下がってつまづきやすくなる、ということなのですがこの時期になると顔面打撲の症例を思い出します。というのは”転んで真正面から顔面を打撲する”まさにぶつかるその瞬間、体は急所(左後頭部)を守るために左の顔面から落ちようとするようなんです。
2例しかないのですが・・・
一つは米寿を迎えた御老人。近郊の山登りの途中で転倒、顔面打撲。私が診たのは翌日だったのですが、顔は仮面舞踏会の仮面を着けているように頬骨から上は両方とも真っ黒でした。パンダどころの騒ぎではありません。
ご家族の話では何にぶつかったのか聞いてもぶつかってないと言い張るし、病院も一杯で1週間後にやっと予約が取れたとのことでした。打撲を1週後に診るなんてありえないので他の病院を探されるようにお伝えしました。といって放っておくわけにもいかず、診せていただきました。
(逆に顔が真っ黒だったので打撲の影響がが頭まで入ってる可能性は低いかな?と思ったので見せていただいたのですが・・・)
頭を軽く抱えてみると・・・右後頭部に衝撃が抜けている(左前顔面を強打してる)!
そのまま右後頭部に溢れてるものを集めるようにして頭を抱えてるとスルスルっと頭の中に収まっていく。よし!
翌々日また見せていただいたのですが、仮面が薄くなっていました。図のように頬骨の下に沿って仮面のように溜まった血が引き、お顔が見えてきていました。
「不思議なことがあるもんだ」と奥さまと息子さんとで喜んでおられましたが私も初めて顔の気の流れを実感したのを覚えています。
もう一つは新宿の駅の階段を登ってる時でした。深夜0時を回ろうかという頃、横目に人がのたうち回る姿が目に入ってきました。みると鼻頭からとも鼻血ともつかない血まみれの顔で壊れたメガネを片手に、慌てて起き上がろうとするが、上手く立てない様子。
血が出てるし羞恥心もあるので、危篤といった状況じゃないのはわかる。
30台前半くらいの若いサラリーマン風。
近づいて「転んじゃいましたね」と声をかけて「まぁまぁ」と階段に座らせる。と同時に頭を抱える。
前述のようなハッキリ溢れてる感じではないが、右後頭部に衝撃が抜けた感覚がある。「左打ちましたね」と言うと抱えた手の中で小さくうなづいている、と同時に相手の体の緊張が抜けて緩んでくる。
「へぇ、そんなのわかるんですか」「!」いつの間にか一人の野次馬さんが座ってこっちを見てる。
その後すぐに救急車が止まる音がしたので退散したのですが、左後頭部を守ろうとする体・・・急所中の急所といわれる左後頭部・・・相当な何かがあるんだろうな、と感じた2例でした。